A P P R E S S O N o w! No.5 掲載記事
今回は「mixiアプリ」の成功例の一つである「ブラウザ三国志」について考察してみたいと思います。
mixiアプリとは、名前の通りmixiの一部として動作させることができるアプリケーションの総称で、現在リリースされているアプリケーションの多くはゲーム系のアプリケーションとなっています。私が今没頭している戦国シミュレーションゲームのブラウザ三国志 for mixiもmixiアプリの一つとなっており、このサービスのビジネスモデルがソフトウェアビジネスの今後を考える上で大変興味深い事例なので、こちらでも紹介したいと思います。
ブラウザ三国志は、基本的に無料のゲームです。武将を育てたり、都市を成長させたりすることができますが、通常の一人で遊ぶタイプの戦国シミューレションゲームと異なり、周囲の君主もコンピューターではなく人間が操作しています。ですので、自分の本拠地の近くの領土が取られたとなれば、「周囲の君主が自分を倒そうとしている」ということで非常に焦り、どういう意図なのかを該当領地を取得した君主に書簡で問い合わせ、もし納得出来る回答がなければ場合によっては開戦することもあります。ゲーム中盤以降は、ほとんどのプレイヤーがどこかの同盟に参加していきます。他のプレイヤーと同盟を組むことで、軍事面での抑止力を向上させたり、難易度の高い城の攻略を目指したりすることができるからです。
このゲームは基本的にずっと無料で遊ぶことができますが、有料の便利オプションがあります。例えば、建設に時間のかかる建物の工事を150円で即座に終わらせたり、内政面での各種資源の収穫量を180円でアップさせたり、派兵していた兵士を80円で即時帰還させたりすることができます。
私は当初、「無料で最後まで遊ぶことができるのに、お金を払う人なんているのだろうか」と疑問に思っていたものですが、ゲームに没頭していくにつれ、例えば自分や味方の周囲に脅威が差し迫った時、「今1,000円くらいかければ安全が確保できるかもしれない」と思うと、緊急時だから今回だけ、ということでついつい有料オプションを使ってしまいます。この時の心境は、遅刻しそうになってタクシーを使う時のそれと似ているかも知れません。
こうして私などは、運営会社の思う壺、掌の上でコロコロと転がされているわけですが、先日あるところでmixiアプリで人気のあるゲームの売上を一部目にすることがありました。ユーザーの中には私のような人が多数いるようで、ゲーム1本で年間数十億を売り上げている会社もありました。以前、ITMediaのゲーム業界を考察した記事で、「米国のあるソーシャルゲームメーカーは、ゲーム内のアイテム課金は『7つの大罪』(傲慢、嫉妬、憤怒、怠惰、強欲、暴食、色欲)を刺激することでうまく回ると話していたという」という指摘がありましたが*1、まさにこの指摘の通りかと思います。
ブラウザ三国志に見られるように、欧米のFacebookアプリ、日本のmixiアプリ*2などのソーシャルアプリと呼ばれるソフトウェアサービスでは、従来のソフトウェアのビジネスとまったく異なるビジネスモデルが実現し、高い収益を上げています。従来のソフトウェアのビジネスモデルは、SIであれば人月に対して、パッケージであれば初期購入とメンテナンス、SaaS/ASPであれば月額費用と、それぞれ工数やソフトウェアやデータセンター運用といった、対価のはっきり見えるものに対してお金を払うものでした。しかしソーシャルアプリのビジネスモデルは、これらの価値に対して課金するのではなく、ユーザーの欲求充足のためにお金を払うモデルとなっています。プログラム的に言えばif文のある条件にマッチさせるようにするだけのためにお金を払うわけですから、「原価がこれくらいなのだから○○円くらいが妥当」という感覚から言えば信じられないような世界です。
こうした「欲求ドリブン課金」は少なくとも当面はエンタープライズのビジネスとあまり接点のないものかも知れませんが、同じソフトウェアのビジネスの展開としては大変興味深い事例ではないかと思っています。
※ SNSが実質プラットフォーム戦争の世界に入っていることについては、これはこれで一本の記事になる面白いテーマなので、また別のコラムで取り上げるかも知れません。
*1 http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1002/17/news087_2.html
*2 先日、GREEもプラットフォーム事業を始めましたね
(APPRESSO Now! 2010年3月24日 第5号)
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